フルオーダーで製作した1964年TYPE−1をご紹介します。
オーナーの萩原様は、学生の頃からビートルに乗るのが夢だったそうです。そんな夢を実現するため、今回のプロジェクトがスタートしました。先ずはコンディションの良いベース車探しから始まったのですが、「運命の出会い」と言っても大袈裟ではないビートルが・・・・。ヨーロッパデリバリーされた正真正銘ワンオーナーの’64BUGは、オリジナルを多く残した素晴らしいコンディションでした!レストアとは料理と同じで、素材の良し悪しが仕上がりに大きく影響します。
ここではその仕上げ方、仕上がっていく姿をゆっくりご覧下さい。

フルオリジナルに近いベース車です。ペイントもオリジナルペイントのシーブルーでした。
フェンダーに軽い板金歴がある以外はほぼ完ぺきのコンディション。
インテリアのペイントは手を入れる必要がないほどの素晴らしいコンディションでした。シートはさすがに貼り替えられていました。後述しますが、シート張り替えにあたり、素晴らしい素材が見つかりました。
ヘッドライナーも破れもなくオリジナルの状態。

全体的に素晴らしいコンディションでしたが、さすがにドアの下側にはサビが発生しており、ここはキッチリと直してあげなくてはなりません。

オリジナルのカーペットは破れてしまっていますが、ご覧のようにボディの溶接面は素晴らしいコンディションです。
オリジナルのドアパネルです。
車載工具ももちろん新車当時からのオリジナル!
フロアーもサビ一つ無いオリジナルです!
ベース車の状態を見極める上で非常に重要なポイントのひとつが、フロントトランク内に収まるスペアタイヤエリアのボディの状態です。
フロントに事故歴があると、必ずと言っていいほどこのエリアに板金歴を見つけることができます。外観はきれいに直すことができても、内側のプレスラインをきれいに直すことは非常に難しいのです。
オリジナルのペイントコードシールも残っていました。
人の手がまったく入っていなかったメーター裏です。

オリジナルのガソリンタンクもご覧の通り素晴らしいコンディション。特にアメリカでベース車を探す際、このエリアから丸々フロントセクションをぶった切って切り貼りしている車両もありますので、重要チェックポイントです。

ナンバーマッチのオリジナルエンジンは過去にオーバーホールされた際に1300ccに排気量アップされていました。
オリジナルのマニュファクチャラープレートです。
バッテリートレーエリアも非常に良いコンディションです。6Vオリジナルのバッテリーカバーも備わっていました。
オリジナルオーナーから受け継いだドキュメント類、ナンバープレート。そして黒いプレート正体は、ベルギーのナンバープレートです。
左の方がオリジナルオーナー、右の方がその息子さん。元々オリジナルオーナーの亡くなられた奥様が普段の足用に所有していたVWだったのです。
オリジナルオーナーは現車を購入した際にヨーロッパでの納車を希望。ヨーロッパをこのビートルでドライブ旅行してからアメリカへとシッピングしました。リアクオーターウィンドウに貼られているデカールは当時訪問した国々。VWをはじめ、多くのドイツ車メーカーは現在でもこのようなヨーロピアンデリバリープログラムを用意しています。
ベルギーからアメリカへ、そして日本へとやって来た’64BUG。横浜は本牧埠頭でのスナップです。
外装パーツを外し終わった’64BUGです。

先ずはルーフの剥離からです。
剥離をしているのはお手伝いに来てくれた「健二郎さん」です!
そしてフロントエプロン部分も!
細かい部品はサンドブラスターで剥離しました。
下処理が終わったFフードに、サフェーサーを塗っています。
Fクォーターの板金です。
剥離された左ドアです。
ドアの下側・・・サビ穴です。ベースの写真を見ると・・案の定です。
左ドア下を切開してアウターパネルを交換します。さすがにここはサビが回っていました・・・。
ドア下のアウターパネルを張替え準備です。
アウターパネルの張替えが終わり、残すは面修正だけです。
ドアの面修正です。
エンジンルームにサフェーサーが入りました。
リアフードの裏側です。サビ無し!!
剥離されたリアフード。 古いナンバーステーの穴を埋めただけで、後は板金無しでした!
サフェーサーが入ったリアフードです。
全体的なチリ(建てつけ)を見ながら、ドアの面を修正していきます。パテは入っていますが、極薄なんです!
リア廻りのチリを確認しています。
右ドアの面修正です。パテが透けているのがお分かり頂けますでしょうか?
リアフェンダーの剥離です。
フロントフェンダーの剥離です。
塗装が仕上がった’64BUG!
暖めておいたNOSのビーディングを使う時が来ました!
NOSのフェンダービーディングを取り付けています。
エンジンの車載を待つだけのエンジンルーム!
クラッチのスラストベアリングを取り付け、いよいよ車載の準備です。
ランニングボードの取り付け。 もちろんジャーマン製を使用!
下廻りの洗浄が終わり、ミッションも下ろして防錆塗装をする準備をしています。
もちろんフロント廻りも足を落としてから塗装します。
リアウェルの下側も綺麗に塗装されました。
フロントも足廻りを組みつけています。
キレイにO/Hされたフロントブレーキです。
キレイに防錆処理されたフロアー。
下ろされたトランスミッションです。
初めてのO/Hだと思います。 泥と油でデブってます!
スチームで洗浄しました。キレイになったでしょ!
今回のプロジェクトもファイナルギアを高速用の3.88に交換します。(写真左が3.88R&P)
ミッションケースにギアキャリアを組みつけます。
コンプリートになったトランスミッション!
今は手に入らなくなってきたMade in JapanのNPR製BoreKitです。
組み立て前のロッカーシャフトです。
バルブ周りの作業が完了して、組み付け前の燃焼室です。
ロッカーのアジャスティングボルトの頭を修正します。
バルブシートのすり合わせ、地道な作業です。
クランクケースをチェックしているところです。
仮組みしてクランクとカムの回りをを確認します。コンロッド、ギアが付いていません!
ショートブロックまで組み上がったエンジンです。
BERGのオイルサンプは、この取り付け部分がとてもしっかりしています!
オイルサンプも組みつけが終わりました。
塗装されたエンジンのカバー類。
片バンクの組み付けが終わったエンジンです。
ロングブロックまで組み上げたエンジンに、カバーを取り付けています。
塗装の下準備をしているファンハウジングです。
ファンハウジングを組み立てています。
コンプリート一歩手前のエンジンです。
エキゾーストは「男のマージド!」です。(笑)
車載されたエンジン! これからキャブ、配線、イグニッション周りの配線などを組みつけていきます。
ほぼ組み付けが完了したエンジンルームです。 ビューティフル!!
シャレで貼ったBERGのステッカー! 有りそうでないでしょ!?
シートフレームのスプリングを修正しています。
シートパットはもちろん交換です!

1964年型オリジナルのカラーチャート表です。
下のカラーは今回のプロジェクトと同色のシーブルーです。
当時のオリジナルのシートは座面がご覧のようなストライプ。側面はソリッドがラーという組み合わせでした。左がファブリック、右はビニールレザーの柄見本です。アメリカ仕様はビニールレザーが標準でした。

なんとシート張り替え用のマテリアルにオリジナルのNOS生地を手に入れることができました。カラーは残念ながらシーブルーと組み合わせられていたグレーはなくブルーですが、ボディカラーのマッチングもグッドです。
質感をお伝えできないのが残念ですが、ただのプリントではありません。
NOSのシート生地で造ったシートカバーです。
いよいよ組み付けです。
張替えが完了したフロントシートです。
ヘッドライナーの張替えが終わりました。ここまでピシッと張るには、熟練の技が必要です!
今回新しくするドアパネルです。
ドアに組み付け中のドアパネル。
張替えが終わった室内です。
カーペットの張替えです。 マテリアルはもちろんジャーマンスクウェアーウェーブ!
オリジナルのラバーマットを洗浄しています。使えるといいな・・・。
VWのカーペット組み付けはクギも使います。これマジなお話!
カーペットは「ジャーマンスクウェアーウエーブ」にて張替えましたが、センターマットはオリジナルの物が使えました!
クォーターのインナーパネルを組み付けています。
サンドブラスターで剥離したバンパーステー。
バンパーをリクロームに出す前に、細かい凹みを修正します。
綺麗にリクロームされたバンパー部品。
組み立て中のバンパー。
イギリスでリプロアウトされたレーダーホイールです。
日本の車輌法に合わせるために、メーターキロ表示をしているところです。
仕上がったスピードメーター。 内側の小さい表示が「Km」です。
ワタクシ、このアングル好きです!
各部のチェックが終わると、いよいよ試運転です! ワクワクドキドキの瞬間です!!
このメーターパネルは塗装していません! オールオリジナルです!!
完成! 
完成した’64BUGとオーナー萩原さん! この笑顔を見てください!!
夕立になりそうな雲をバックにシブイ写真が撮れました!
Let's Play VWs さんが取材に来てくれました。
Let's Play VWs の誌面です。